京都駅からJR琵琶湖線で、滋賀県の近江八幡駅へ。所要時間としては1時間かからないくらい。近江八幡にある「TWO RABBITS(トゥーラビッツ)」のタップルームに行ってきた。
TWO RABBITSと近江八幡
近江八幡駅からの主な移動手段は路線バスになる。
TWO RABBITSの創業者であり醸造責任者であるショーンさんはオーストラリア出身。では、なぜTWO RABBITSは近江八幡にブルワリーを構えたのか。この質問は、社名の由来と同じくらいよく聞かれるらしい。
開業場所を探しているときに、歴史ある近江八幡の町に出会い、この場所に恋をして、ここでブルワリーを立ち上げようと決めたそうだ。
近江八幡の名所の1つである「八幡堀」。豊臣秀次がこの地に八幡山城を築いた際に掘られた人口の水路で、近江商人の発祥と発展、そして町の繁栄に大きな役割を果たしてきた。
ちなみに、近江八幡を訪れたこの日は雪予報。突然雪が降り出し、強くなったかと思うと、数分後にはあたり一面雪に覆われていた。
昭和初期までは、町の人々の流通路であり、経済の要だった八幡堀だが、その後は陸上交通の発展で不要に。八幡堀は廃れてドブ川になってしまい、埋め立てるという意見も出ていた。
しかし、地元の青年会が「今、自分たちが存在するのも八幡堀があったからで、町の歴史が詰まった堀を守らなければならない」と声をあげ、自主的に清掃に取り組むなかで、徐々に輪が広がり今の姿まで回復したとのこと。
堀に沿って、白壁の土蔵や旧家が立ち並びる風景は、映画やドラマのロケ地としても多く使われている。
八幡堀を辿っていくと、琵琶湖最大の内湖である西の湖に辿り着く。
近畿地方で最大級のヨシ群落が広がり、野鳥など貴重な動植物も生息していて、ラムサール条約湿地に登録されている。
近江八幡水郷めぐりでは、舟に乗って八幡堀を巡ることができる。
冬季は休業中とのことで、舟がずらりと並んで、春からの出番を待っていた。
豊臣秀次が築いた八幡城
1585年(天正13年)に豊臣秀次によって築城された八幡城。標高271.9mの八幡山山頂にあったが、今は城跡となっている。
秀次が八幡堀と琵琶湖とをつなぎ、人、物、情報を集め、楽市楽座を実施することで城下を活気づけたことが、近江八幡の発展のきっかけとなった。
ロープウェーで登ろうとした途端、雪が強まってきた。運行はしているので、せっかくならと頂上を目指す。
ゴンドラで上に辿り着くと、あたり一面、雪で真っ白になっていた。慎重に足を進めていく。
天気が良いと、ここから琵琶湖を一望できるらしい。遠くにうっすらと見えはするものの、真っ白で一望とはいかなかった。
長命寺温泉で温まる
ビールを飲む前に、冷えた身体を温めるために、バスに乗って「長命寺温泉 天葉の湯」へ。
天気が一時的に回復。琵琶湖を眺めることができた。大きい、もはや海だ。
身体も温まったところで、いよいよビールを飲みに行こう。
TWO RABBITSのタップルームに
バスで八幡堀のあたりまで戻り、TWO RABBITSのタップルーム「Two Rabbits Brewing BEER HOUSE」に。
蔵を改装したタップルームは、雪模様でも、趣があって良い。
ビールサーバーには、各ビールのイラストが。TWO RABBITSのビールは、各ビールのイラストも魅力的だ。
1杯目は「がしゃどくろ ヘイジーIPA」を。TWO RABBITSの妖怪シリーズ第5弾のヘイジーIPA。缶で飲んだことはあるが、やはり現地で飲むビールは一味違う。
2杯目は、18世紀に北イングランドで生まれたジンジャービールを、現代風にアレンジして蘇らせたという「GINGER BEER」を。生姜の爽やかさと辛味がちょうどよく、ゴクゴクと飲める1杯。
簡単なフードメニューもあり、ステーキパイを注文した。ちなみに、フードの持ち込みもOKとのこと。
店内にはカウンター席と、テーブル席がいくつか。古蔵を改装したからこその居心地の良さがあった。
店内には、過去に販売されたクラフトビールの缶がずらりと貼り付けられた壁があった。「これは飲んだことがある」とか「これは飲んだことないけれど気になる、飲みたかった」などと話すのも楽しい。
たねや限定のクラフトビール
タップルームの近くにある、歴史ある和菓子屋の「たねや 日牟禮乃舍」。たねやでだけ飲めるTWO RABBITSのビールがあると聞いて、さっそく訪れた。
竈門には火がくべられていて、落ち着く雰囲気の店内。
ここだけで飲めるビールが、この「グリーンティー&ライス」。深蒸し茶、玄米茶、滋賀県産滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)というお米を原料にしたお茶のビール。お茶の風味と苦味がちょうど良い。
ビールの隣にあるのが、たねや日牟禮乃舍限定のつぶら餅。もち米の生地で粒餡を包んで焼き上げた、ころっと丸くて可愛らしい和菓子。
サクサクもちもち食感の皮にあんこが包まれていて、とても美味しかった。そして何より、緑茶のクラフトビールとの相性も抜群。
ちなみに、グリーンティー&ライスのほか、コーヒーのビールもたねや限定で飲むことができるので、こちらも要チェックだ。
最後に
八幡山城と八幡堀を1つのきっかけとして栄えた近江八幡の町を歩いていると、至るところで歴史を感じれれた。
八幡堀が一時期はドブ川になっていたこと。地元の人たちが立ち上がり清掃を始めたことで今の綺麗な状態に戻ったこと。多くの人の想いと活動があるからこそ、今の近江八幡の町があるんだろう。
そんな町並みを見たショーンさんが、近江八幡に恋をして、ここでTWO RABBITSを立ち上げることを決めたと考えると、過去から現在に至るまでの歴史の繋がりをひしひしと感じる時間だった。
TWO RABBITSに訪れる際は、ぜひ近辺を散策していただきたい。
TWO RABBITS BREWING COMPANY
Web:https://www.tworabbitsbrewing.com/
Instagram:@tworabbitsbrewing
Two Rabbits Brewing BEER HOUSE
住所:滋賀県近江八幡市大杉町27
アクセス:JR近江八幡駅よりバス7分、そのあと徒歩2分
営業時間:月 – 木 12:00 – 18:00、金土日祝 12:00 – 20:00
定休日:-
Instagram:@tworabbitsbeerhouse
※最新の営業時間等はホームページ、SNS等をご確認ください。
余談
お気付きの方もいるかもしれないが、近江八幡の町を歩いていると、コレを本当によく見かける。
「飛び出し坊や」の愛称で親しまれるこの看板は、滋賀県の東近江市(当時の八日市市)が発祥で、今や滋賀県の名物になった。近江八幡の町にいる、さまざまなビジュアルの飛び出し坊やを探してみよう。