神奈川県の南西部、横浜からは電車で1時間くらい。もう少し足を伸ばせば熱海に着くくらいの場所に位置している真鶴。泊まれる出版社「真鶴出版」に一度は泊まってみたいと思っていた。
いつもは目的地を行きたいブルワリーから決めることが多い。ブルワリー周辺の気になる場所を、ついでにまわるような感じ。一方今回は真鶴出版が目的で、クラフトビールのことなんて全く念頭に置いていなかった。
だけれど、真鶴の地図を眺めていたら気になるブルワリーを見つけてしまった。見つけてしまったのなら、立ち寄りたい。
そのブルワリーのタップルームが今まで色々と巡ってきたなかでも得に記憶に残る場所だった。
というわけで、まずは横浜からJR東海道本線に乗り換えて、真鶴駅に向かう。
海と山に囲まれた街、真鶴
真鶴町の面積の半分を、相模湾に突き出す真鶴半島が占めている。広々とした海に三方を囲まれていて、一方振り返ってみると、箱根の山々を見上げることができる。約23万から15万年前に箱根火山のすそ野で起きた噴火によって流れ出た大量の溶岩が冷え固まって、真鶴半島が形成されたと言われている。
そして真鶴という名前は、相模湾に突き出た半島の形が、鶴が羽を広げて飛んでいる姿や首を伸ばしている姿に似ているというのが由来。

一旦荷物を置かせていただくため、早々に真鶴出版へ。2号店と3号店の2棟ある宿泊棟。2号店のロビーは週末は本屋としてもオープンしている。本に雑貨など気になるものがたくさんあったけれど、後でじっくり見る時間はあるので、真鶴散策に出発。
割烹 福寿司で海鮮丼ランチ
旅行で海沿いの街に来たのなら、やっぱりお魚は食べておきたいわけで。真鶴出版でおすすめしてもらった「割烹 福寿司」で、地魚の海鮮丼を注文。咀嚼するほどに魚の旨みが染み出してくる。
大将が毎朝市場に出向いて、魚を仕入れているとのこと。日本全国どこにいても新鮮な魚を食べられる時代になったけれど、やっぱり港町で、地元で採れた魚をその土地で食べるのは特別に美味しく感じる。

割烹 福寿司
住所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴406-6
アクセス:JR東海道本線「真鶴駅」から徒歩1分ほど
真鶴で採掘される日本の銘石、本小松石
お昼を食べて、楽しみにしていたブルワリーに向かう。11月後半だけれど、まだまだ暖かくて歩くのにはちょうど良い気温。道中で、台座が石のお香立てがずらりと並んでいるお店を発見。
岩本石材という石材店で、本小松石(ほんこまついし)を加工した商品なども販売している。

希少な高級銘石「本小松石」。箱根火山の噴火で流れ出た溶岩が海に押し出されて、急速に固まって形成されたもので、真鶴でのみ採掘される。
同じ石肌のものが二つとないので、墓石や記念碑などの最高級材として重宝されているらしい。

岩本石材
住所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1815-1
アクセス:JR東海道本線「真鶴駅」から徒歩3分ほど
Instagram:@iwamotosekizai
ボブ アイスクリームでクールダウン
引き続きブルワリーに向かう道中だが、寄り道こそが旅の醍醐味だ。気になるアイスクリーム屋さんを発見。先ほど書いた通り、11月後半だけれどまだ暖かい。なんなら歩いていたら暑くなるくらいの陽気なので、アイスクリームでクールダウンすることが必要不可欠なのだ。
広々とした店内。並んでいる観葉植物は購入することもできる。

こんなアイスクリーム屋さんが家の近くにあることが羨ましい。引っ越し先を考えるとき、家の近くにあったら嬉しいものとしてアイスクリーム屋さんが加わった。他にはコーヒースタンド、銭湯、座り心地が良いソファがあるお店、四文屋があったら嬉しい。

BOBICECREAM(ボブアイスクリーム)
住所:神奈川県足柄下郡湯河原町福浦354
アクセス:JR東海道本線「真鶴駅」から徒歩7分ほど
Instagram:@bobicecream_yugawara
HUMANS BEER で、海を眺めながらクラフトビールを
たとえば線路が海沿いに出て車窓から一面の海が見えた瞬間は「うわぁ!」となるし、坂道を登って登って、遠く向こうに海があるのがちらっと見えた瞬間は「やっと見えた!」となる。


真鶴でなんだかんだメインの目的地になった、「HUMANS BEER」の海の上のタップルームに到着。本当に海のすぐ目の前にあって、良すぎるロケーション。

いつも1杯目はラガー系からいくことが多いけれど、ここはヘイジーが美味しいと聞いていたので、さっそくヘイジーIPAを注文。ホップのフルーティさがありつつ、飲み口は重すぎなくて、するっと飲めてしまった。

グラスに描かれた可愛いキャラクターは、「アダムスター」という名前。お化けかなと思っていたら、実はシーツをかぶった男の子だった。
なぜだかわからないけれど、海はずっと眺めていられる。自然を感じながら、ゆったりとクラフトビールを口に含む。とても贅沢な時間の使い方ができた。

クラフトビールのお供としては絶対的な地位を獲得しているフィッシュ&チップス。2種類のお魚から選ぶことができた。港町で、海を眺めつつ、潮風を浴びつつという最高なシチュエーションも相まって、なおさら美味しく感じられた。

道草書店で道草
休日、旅先でお昼に飲むクラフトビールを堪能し、宿に戻る道すがら、「道草書店」に寄り道。軒先にちょこんと椅子とテーブルが並んでいる風景からすでに、心惹かれるものがある。

お店に入ってすぐの土間のようなところが書店スペースで、その奥の小上がりがカフェになっている。畳、本、レコード、年季が入った椅子。実家のような雰囲気に古道具に囲まれていると、とても落ち着く。

道草書店
住所:神奈川県足柄下郡真鶴町岩259-1
アクセス:JR東海道本線「真鶴駅」から徒歩5分ほど
Instagram:@michikusa.books
Web:https://change-to-the-border.jimdosite.com/
真鶴出版の宿泊者むけのまち歩きに参加
海鮮丼、アイスクリーム、クラフトビール、本と、4時間くらい真鶴を巡って宿に戻ってきた。真鶴出版では宿泊者向けに「まち歩き」を開催している。まずは宿のロビーで、真鶴の街のことについて教えてもらった。
真鶴では、例えば高層のリゾートホテルが建つような、乱開発を防いで美しい景観や生活環境を守るために、1993年に制定された「真鶴町まちづくり条例(通称:美の条例)」というものがあって、住宅や施設はこの基準に沿って新築、改築されるとのこと。
他にも、真鶴と採石の歴史や、真鶴半島の 「お林」のことについても教えてもらった。お林って何?となると思うのだけれど、ここには2日目に実際に行ったので、後ほど改めて書こうと思う。
真鶴の歴史や街並みについて大まかに聞いた後は、いよいよ宿を出て街歩きへ。特徴的な石垣の話などを聞きつつ、いろんなお店も紹介していただいた。

最初に立ち寄った「珈琲店 watermark」。元々は岡山の倉敷の方で珈琲豆の焙煎などを行っていた方が、ここだったらお店を持てそうだと感じで、真鶴で実店舗をオープンしたとのこと。
ここで販売していた珈琲豆屋が焙煎した麦茶「むぎ香茶」が、まろやかで美味しくて思わず購入。主な仕事は接客だというクサガメのふくちゃんがとても可愛かった。
坂道や階段が多い真鶴。代表的な散策ルートの「真鶴周遊ウォーキングコース」だと、約73.4mの高低差があるらしい。このウォーキングコースの内容を見て、どちらかというと高低差よりも消費カロリーがたったの527キロカロリーなことに驚きつつ。でもだいたい和食一食分らしいので、そんなものかと思ったり。

港が一望できる場所まで案内してもらい、記念写真を撮りつつ、おすすめのお店を真鶴出版のスタッフの方が予約までしてくれて、無事夕ご飯にありつくことができた。
深夜、ゆったり本を読む

夕食後に電車とバスで少しだけ足を延ばして、「ニューウェルシティ湯河原/いずみの湯」で温泉に浸かって、真鶴出版に戻ってきた。泊まれる出版社で過ごす夜の時間。

HUMANS BEERで購入して冷蔵庫で冷やしていたビールの栓を開けて一息。真鶴出版2号店には2部屋客室があるのだけれど、この日は他の宿泊者がいなかったので貸切状態だった。
共用スペースのキッチン、客室など、至るところに本棚があって、売り物とはまた別で自由に読んでいい本がたくさん並んでいる。真鶴出版の方々の私物の本とのこと。
気になったもの、普段はあまり触れないジャンルなど、いろんな本を手にとってみる。夜遅くにゆったり本を読む。
自分の家だとなかなかできない。スマホはそこら辺に放置して、なんとなく気に入った場所におさまって、じっくり本を読んでいたら深夜1時をまわっていたので、さすがに明日に備えて眠ることに。おやすみなさい。

真鶴出版
住所:神奈川県足柄下郡真鶴町岩217
アクセス:JR東海道本線「真鶴駅」から徒歩7分ほど
Instagram:@manazurupublishing
Web:https://manapub.com/
2日目、真鶴港と貴船神社へ
おはようございます。真鶴出版で用意してくれた朝ごはんをいただいて、昨日行かなかった場所を巡っていく。まち歩きで案内してもらった道も通りつつ、何度かアップダウンを繰り返して真鶴港の方へ。

「港喫茶ぺぺコーヒー」や「真鶴 魚座」など気になる場所をいくつか覗きつつ、レストラン「honohono」でランチを食べることに。
肉ランチ、魚ランチ、パスタランチ、カレーランチの4種類がそれぞれ日替わりで提供されている。どれも気になるのだけれど、やっぱり港町に来たんだからと魚ランチをチョイス。
ハワイ語で hono は「入江」、honohono は「お散歩」という意味なんですって。

honohono
住所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1027
アクセス:JR東海道本線「真鶴駅」から徒歩20分ほど
Web:https://honomana.com

貴船神社の本殿までの大階段は、煩悩の数と同じ108段。真鶴産出の小松石の中でも、「青」という最良石で造られていて、雨に濡れたときの景観が一層趣深いとのこと。この二日間、旅行としてはありがたいほどに快晴だったのだけれど、もし雨だったらそれはそれで楽しめるのかもしれない。
毎年7月末に開催される「貴船まつり」では、この急な石段を約800kgの神輿を担いで駆け下り、駆け上がるというのだから、本当にもう凄すぎる。
相州真鶴 貴船神社
住所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1117
アクセス:JR東海道本線「真鶴駅」から徒歩26分ほど
Web:https://kibunejinja.com/
真鶴の魚が美味しいのは「お林」のおかげ?
貴船神社からさらに歩いて、真鶴半島の先端の方に近づいていく。クロマツやクスノキなどの樹木が茂るこの場所は「お林」と呼ばれていて、古くから大切に保護されている。
昨日撮ったこの写真の右側のこんもりしているところが、お林。

遊歩道を通って、お林のなかを通り抜けて半島の先端を目指す。昨日に引き続き、歩けば汗ばむくらいの陽気だけれど、お林のなかは日陰だから比較的涼しく感じる。

お林の歴史は江戸時代まで遡る。寛文元年(1661年)に小田原藩が15万本の松苗を植林したのがはじまり。明治37年には、魚つき保安林に指定された。魚つき(うおつき)保安林とは、魚介類の繁殖や生息環境を守る目的で、海岸や河口付近に設けられた森林のこと。
木々の陰が魚の産卵や生育の場所として適していることや、山や森のミネラルがお林を通して海に溶け込むことから、豊かな漁場がつくられると考えられている。
真鶴で美味しいお魚を食べられたのも、昔から今に至るまで真鶴で暮らしてきた人たちがお林を大切に守り、育ててきたからなんだと思う。
真鶴岬の先端の、大きな岩が並ぶ三ツ石は真鶴の景勝地。約15万年前に噴出した溶岩(安山岩)によってつくられたもの。

大潮の干潮時には先端まで歩いて行ける場合もあるようだが、お勧めはしませんとのことだった。実際たまに、三ツ石の方に取り残されてしまう人がいるらしい。

真鶴ピザ食堂KENNYで最後の腹ごしらえ
真鶴出版から三ツ石まで、行きは歩いたものの流石に帰りはしんどかったので、バスで真鶴駅近くまで戻った。真鶴での最後のご飯は、駅のすぐ近くにある「真鶴ピザ食堂KENNY」で。
真鶴の干物を使ったピザが名物で、メニューにある「うずわ」は宗田鰹のことだった。

真鶴ピザ食堂KENNY
住所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴402-1
アクセス:JR東海道本線「真鶴駅」から徒歩1分ほど
Instagram:@manazuru.kennypizza
あとがき
真鶴での一泊二日。HUMANS BEER でぼんやり海を眺めながらクラフトビールを飲んだり、真鶴出版で夜中に本に没頭したり、お林のなかを歩いたりと、普段の生活からはだいぶペースを落とした時間を過ごせた気がする。
海を眺めたくなったら、また来ようと思う。

